【コラム】いきものを展示する園館(動物園・水族館・植物園)の存在意義と来館者の期待のギャップについて考える

 皆さんは動物園や水族館に何を求めて訪問するでしょうか。
 癒し…、珍しい動植物を見たい…、空間自体を楽みたい…、目的は人それぞれですよね。

 では一方で、動物園や水族館、植物園はどのような目的で設立されているのか。2022年10月2日に、元日本テレビアナウンサーで、2022年4月から同志社大学の助教に就任された桝太一さんが企画されたシンポジウムを聴講して、各園館の果たすべき役割と、来館者の期待のギャップがあるのではないかと感じたので、このコラムを執筆することにしました。

 ここに記載することは、筆者の推測や持論を多く含む内容なので、それが答えだという内容ではありません。お読みいただいた皆さんが自分なりに考えてみるきっかけになれば幸いです。

動物園・水族館・植物園の役割

 国内の動物園や水族館の集まりである公益社団法人日本動物園水族館協会(JAZA)では、次の4つの役割を掲げています。協会の役割ですが、各動物園・水族館も、そして同協会の範疇外ですが、植物園も同様の役割を担っていると考えてよいと思います。

1 種の保存

2 教育・環境教育

3 調査・研究

4 レクリエーション

来館者が求めるもの

 さて、桝さんのシンポジウムでは、動物の写真に吹き出しをつけて、特徴的な生態や気持ち、注意事項を喋らせるなど、擬人化することについて議論がなされました。各園館では、生物学的に正確な情報を伝えるために、動物を擬人化することには否定的で、一方で、正確に伝えようとすると回りくどい表現になり伝わりにくい、そもそも聞いてもらえない、解説を見てもらえない、という悩みをお持ちでした。

 ここで、来館者は何を求めているのだろうと考えたところ、(もちろん筆者の持論ですが)動物園や水族館に行く人は、マニアたちを除いて、種の保存に興味があるわけではなく、何かを学習するためでもなく、癒されるため、特に潜在意識の中では、動物たちに、何か人間味のようなものを感じ癒されるために足を運んでいるのではないでしょうか。
 その昔、後ろ足で立ち上がるレッサーパンダの風太くんがバズったことがありました。今でも、まるで日曜日のお父さんのように寝転がるカンガルーや物乞いをするクマなどの画像や映像には「いいね」がたくさんつくことでしょう。こういった事例をっ見ても、自分たち以外の動物の人間味、あるいは人間っぽさに我々ヒトは魅かれるところがあるのでしょう。

各園館の現場と来館者をつなぐためには…

 各園館の担当者、特に研究者と呼ばれる人たちは、断定的な表現や動物を擬人化するなどの手法を忌避する傾向にあるでしょう。それは科学的に正しいことを伝えることが役割なので、仕方のないことです。
 一方で、動物園や水族館に足を運ぶ人の多くがマニアではなく、深い知識のない方が多く、擬人化などの手法を使う方が、伝わる場合が多いのが実情です。

 ではどうすべきか。簡単な議論ではないので、このコラムでは結論に至ることはできませんが、まずは各園館に足を運ぶ方は「楽しむこと」が重要です。その中で、知らないうちに色々と気付くことや学びがあるでしょう。シンポジウムの最後でも、来館者に気を付けてほしいことはと聞かれて、各園館の担当者は「とりあえず楽しんでほしい」と口をそろえていました。
 この先も、来館者への説明方法など、各園館の担当者の創意工夫は続くと思います。なので、まずは動植物を、そして展示を楽しむことが、現場の皆さんの思いと、来館者をつなぐ第一歩になるのでしょう。 

海遊館

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