学名:Reticulitermes speratus
英名:-
分類:昆虫綱 ゴキブリ目 ミゾガシラシロアリ科
サイズ:5mm前後(働きアリ)
時期:春~秋
分布:本州、四国、九州
レッドリスト(絶滅危惧種):掲載なし
概要、特徴、生き方など
古びた木造建築物を食害することで有名なシロアリの一種です。アリのように社会性を持ち、白いからシロアリと呼ばれていますが、ゴキブリの仲間です。
新女王と新王の出会い
ヤマトシロアリは、5月頃に、各巣から一斉に翅アリ(有翅虫;将来女王・王になる個体)が飛び出し、結婚飛行を行います。結婚飛行でめでたくカップルになったメスとオスは、巣を作る場所を探して歩きまわりますが、その際には、必ずメスが前、オスが後ろを歩きます(「タンデム歩行」と呼ばれています)。
沖縄科学技術大学院大学の水元惟暁 博士らの研究によると、カップルになれなかったメスやオスは、同性同士で巣を作りますが、実はこの際もタンデム歩行が行われ、オス-オスのタンデムパートナーでも、前を歩く個体がメスのようにふるまい、メス-メスの場合も、後ろを歩く個体がオスのようにふるまうことが明らかにされています1)。
同性同士でもタンデムパートナーを作るメリットとしては、お互いをグルーミングすることにより病原菌などを取り除くことができることにあります。また、メス同志であれば単為生殖で繁殖できますし、オス同士の場合は、他の巣に侵入してメスと交尾することもできる、とのことで、そういった生存戦略を選んでいるようです。
ヤマトシロアリの巣存続システム
ヤマトシロアリは、最初は1ペアと女王と王が巣を創設しますが、巣が大きくなると、単為生殖でクローン女王を産み、巣内の繁殖を引き継ぎます(この女王を二次女王という)。一方で、女王は有性生殖と単為生殖を使い分けることができるので、有性生殖で働きアリ(働きシロアリ?)を産みます。こうして、自分の分身を巣の中で増やしていきます。
ただ、松浦健二先生、高田守先生、小林和也先生らの研究グループの調査によると、単為生殖で生み出されたクローン女王は、有性生殖で生まれた女王に比べて体が小さく、生存率も低く、巣の中で働きアリなどを産んでいる分には問題ないのですが、羽アリとして巣の外へ飛び立つと、新王アリとペアになって新たな巣を創設するには至ることができないことが明らかになっています2)。実際に群飛(「結婚飛行」ともいう。新王アリと新女王アリが一斉に巣から飛び立ち、ペアを見つける儀式)に含まれる単為生殖女王を調査した結果、その数は約3分の1ほどで、王アリとペアになり新たな巣を創設できたのは、有性生殖女王を含む全体の約8%に過ぎなかったことが分かっています。
この研究には、クローン対立による巣内の無駄なコストの増加について書かれているのですが、難しい内容なので、興味のある方は原著をご覧ください。
自然界での役割(サイト管理者の私見です)
本来は木造建築ではなく、枯死木などを餌にしていることから、立ち枯れた木が土に還る自然の循環の一旦を担っているものと考えられます。
◆参考文献等
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