オオセンチコガネ（大雪隠黄金）の図鑑

学名：Phelotrupes auratus
英名：Dung Beetle（糞虫全般）
分類：昆虫綱 甲虫目（鞘翅目）センチコガネ科
サイズ：2㎝前後（成虫）
時期：春～秋（成虫）
分布：本州
レッドリスト(絶滅危惧種)
・絶滅危惧Ⅱ類：長崎県
・準絶滅危惧種：石川県・島根県
・滋賀県分布上重要種、奈良県郷土種

赤いオオセンチコガネ成虫（別名：アカセンチ） — **青いオオセンチコガネ成虫（別名：ルリセンチ）**

概要、特徴、生き方など

成虫の特徴

　成虫は光沢のある青や緑、赤などの色をしたとても美しい昆虫です。
　この色は地域によって違いがあり、例えば、関西地域では、京都では赤、滋賀では緑、奈良では青（瑠璃）（それぞれ「アカセンチ」「ミドリセンチ」「ルリセンチ」とも呼ばれます）と地域によって色が異なることが有名です。

　近畿地方のオオセンチコガネの多様化は、この約3,800年以内に起こったことが明らかにされており、特に、滋賀県南部のミドリセンチと紀伊半島のルリセンチの出現は約200年前とされており、これらの多様化は稲作の普及など、人間活動が関与していることが示唆されています⁴⁾。

　奈良で行われた研究によると、オオセンチコガネは腐肉よりも新鮮な牛糞や鹿糞を好み、近縁種であるセンチコガネは、牛糞には少し集まるものの、鹿糞はあまり好まず、腐肉を好むという結果が出ています¹⁾。

　美しい色を持つオオセンチコガネの外骨格（クチクラ）の表層には、電子密度と電子透過性の異なる2種類の物質が交互に積み重なった10～12層（1層の厚さは60～120 nm（nmは100万分の1mm））の構造があります²⁾。

自然界での役割（管理者の私見を含みます）

　獣糞を主食にしていることから、自然界の廃棄物処理者としての役割を担っていることが考えられます。オオセンチコガネを含むいわゆる“糞虫”の仲間がいなければ、森の中は二ホンジカやイノシシなどの糞であふれかえってしまうでしょう。
　また、卵を産み付ける糞を地中に埋める習性があることから、ツキノワグマなどの果実食動物が食べ、糞として排出された果実の発芽率向上にも一役担っている可能性もあるようです³⁾。

見分け方

似た昆虫との見分け方

　オオセンチコガネはセンチコガネと非常によく似ていますが、頭楯（頭部正面を覆う外骨格）と胸部背面の筋で見分けることができます。
　頭楯での見分け方は、三角、あるいは台形のような形をしていたらオオセンチコガネ、半円のような形をしていればセンチコガネです。
　胸部背面の筋については、筋が胸部背面をほぼ縦断していればオオセンチコガネ、胸部の半分程度までであればセンチコガネです。
　個体差もありますが、上記の2点を見ることでほぼ同定が可能です。